※この記事について 本記事は、現役グループホーム介護職員である筆者個人の経験と葛藤を綴ったものです。特定の疾患に対する医療的な診断や、絶対的な治療・対応法を示すものではありません。あくまで「現場の一つのリアル」としてお読みください。
はじめまして。40代・バツイチで介護の世界に飛び込み、なんとか3年目に突入した「よしほに」です。
グループホームの現場で日々さまざまな認知症の症状と向き合っていますが、中でも特に対応が難しく、自分の心を大きく揺さぶられるのが「帰宅願望」です。
今回は、タイトルにもある通り「嘘をつくのは正解なのか?」という、現場で抱え続けている小さな葛藤について、リアルな本音を書いてみようと思います。
夕暮れ時のグループホームは「時間との戦い」
夕方になると、ふと荷物をまとめ始めたり、ソワソワと出口を探して歩き回ったりする方が増えます。いわゆる「夕暮れ症候群」と呼ばれるものです。
「家に帰りたい」「お迎えはまだかしら」
一人の方がこう言い出すと、その不安はフロア全体にあっという間に波及します。不安は連鎖するんです。現場の平穏を守るためには、この不穏な空気をいかに迅速に鎮めるかが勝負になります。
正論でぶつかり、お互いに疲弊していた新人時代
働き始めたばかりの頃の私は、とても真面目に(今思えば愚直に)事実を伝えていました。 「ここは○○さんのホームですよ」「今は夜だから、外は暗くて帰れませんよ」
しかし、認知症の方一人ひとりの「頭の中の現実」は全く違います。 ある人はここを「職場」だと思っていて「仕事が終わったから帰る」と言い、ある人は「病院」だと思っていて「早く退院しなきゃ」と焦っています。逆に「これから仕事に行かないと!」と立ち上がる人もいます。
私たちが生きているこちらの「現実」をいくら説明しても、平行線をたどるだけ。しかも短期記憶の障害があるため、何十分もかけてようやく納得してもらえたと思っても、数分後にはリセットされて同じことの繰り返しになります。
説得すればするほど相手の不安を煽り、自分もどんどん消耗していく。そんな毎日でした。
自然と口をついて出るようになった「優しい嘘」
そんな失敗を繰り返すうちに、だんだんと私の口から「嘘」が自然に出るようになりました。
「今日はもう遅いので、一晩ここに泊まっていきませんか?」 「明日ね、ご家族がお迎えに来ますよ」 「とりあえず、お食事が終わったら一緒に帰り道を考えましょうか」
ご本人が「今いる」と認識している世界に合わせて、望む言葉をかける。そうやって会話をしながら、自然とこちらのペース(食事や別の話題)へ持っていく。
悪い言い方をすれば「うまくあしらう」術を覚えたわけですが、結果として、入居者様が笑顔でホッと落ち着いてくれる時間は間違いなく増えました。
対人援助に正解はない。明日も僕は「嘘」をつく
現場の空気を守り、入居者様を安心させられるようになったのは、介護職としての「スキルの向上」や「成長」と呼んでいいのかもしれません。 でも、夜勤の静かな時間に、チクリと胸が痛む瞬間があります。
「自分はただ、息を吐くように嘘をつける『都合のいい人間』になってしまっただけじゃないか?」と。
研修のテキストで学ぶ「受容」や「共感」という綺麗な言葉と、現場で実際に使う「優しい嘘」のギャップ。
対人援助の世界に、明確な白黒つく正解なんてきっとありません。自分が成長したのか、ただ嘘つきになっただけなのか。その答えはまだ出ないけれど、私は今日もまた、「明日ね」と微笑みながら、この葛藤と一緒にシフトをこなしていくのだと思います。
同じように現場で悩んでいる方、在宅介護で葛藤しているご家族の方。 今日も本当にお疲れ様です。一緒に踏ん張っていきましょう。
コメント